就活生の意識変化に見る採用活動処方箋|第3回 これからの採用手法

戸川 博司  株式会社ハウテレビジョン

ビジネス本部 事業開発部 部長

2002年㈱リクルート入社。㈱ヒューマンシップを経て現職に至る。
リクルート時代に新卒・中途採用領域の営業マネージャーを務め、求人広告の提供以外にも、社員研修やインナーコミュニケーションなどHR領域全般の支援を行う。
これまでのキャリアを通じて、コンサルファーム、IT、商社、メーカー、メディカルなど東証一部上場企業からスタートアップ企業まで幅広い支援実績がある。
現職では新卒採用向け『外資就活ドットコム』と中途採用向け『Liiga』の採用プラットフォーム運営に携わっている。

柴田:

これからの就活に関するトレンドについてどのようにお考えですか。

戸川:

主にはテクノロジーの進化による採用・就職活動の変化と、働き方の変化による就業観の変化があると捉えており、年々少しずつ変化しています。例えば、企業側においては、採用管理システム(ATS)が普及しており、採用データと入社後の活躍データから求める人材を導きだしたり、AIを活用して初期スクリーニングを自動化したりといった変化があります。学生側においては、SNSや口コミサイトで情報収集をしたり、ChatGPTで面接対策をしたりと、テクノロジーの進化によって、就職活動も変化してきています。企業を選ぶ視点については、先日のインタビューでもふれた通り、大きな変化はないものの、リモートワークや副業の可否といった視点は、ここ最近の就業観の変化といえます。

柴田:

採用活動の効率化も益々進みそうですね。企業は時代の変化や学生の就業観の変化、テクノロジーの進歩をどのようにキャッチアップしたらよいでしょうか。

戸川:

大手企業や人気企業の動向をチェックしてみると良いかもしれません。
ベンチャー企業は、しがらみなく様々な新しい取り組みにチャレンジをしています。また、大手企業の動きは中堅・中小企業が追随するケースも多いので、その辺りをバランスよく見ているとトレンドや変化のヒントが掴めるのではないでしょうか。

柴田:

なるほど、参考にしてみます。
最近、一度退職した社員を改めて採用するという話をよく聞きます。これはどういうトレンドなのでしょうか。

戸川:

「アルムナイ」ですね。優秀な人材採用の競争が激化していることを背景に、大手企業中心に広がってきていますね。退職前のキャリアに加え、他社で培った経験を生かした即戦力人材としての期待が高まっています。育成コストがかからないですし、外に出てはじめてわかる会社の魅力を感じた上で、戻ってきてくれているので、ロイヤリティも高く、企業にとってはメリットが多い採用手法です。そのため、退職した社員を集めた懇親会を開催するなど、コミュニケーションを積極的に行う企業が増えてきています。

柴田:

これまでの中途採用とは違った採用の選択肢が増えるのはよいですね。アルムナイを形成する上での注意点などはありますか?

戸川:

まず、退職する社員と会社側の信頼関係を残しつつ雇用関係を終わらせるということです。成長して「また戻りたい」「戻ってきて欲しい」とお互いに思える関係性が必要です。退職の相談をされたときには、自社の都合を伝え、引き留めるようなコミュニケーションは厳禁です。退職に至った背景や理由を伺い、異動や役割変更で解消できることがあれば提案し、それでも退職する意思があるようなら、キャリアを応援する姿勢が大切です。

柴田:

そうですね。

戸川:

あと、トレンドという表現とは異なりますが、口コミサイトやSNSの普及により、企業の姿が赤裸々に透けて見えるようになったので、採用上のコミュニケーションだけではなく、人事制度や社内の体制そのものを変えていかなければ、採用力が高まらなくなってきました。

柴田:

採用担当者に期待されることも変わってきそうですね。

戸川:

そうですね。元々、採用や人事に関わる成果を定量的に把握するのは難しいものだと捉えています。例えば、新卒採用においては、エントリー数や各プロセスのコンバージョンレートなど数値化できるものが限られます。その数値目標を担当者に課してしまうと、数値を高めるための打ち手に終始しがちになり、根本の採用力を高めるための課題に向き合えなくなってしまいます。これからの時代は、HR全体を理解し、採用力を高めるために、HR全般の課題解決に取り組める採用担当に変化することが求められているのではないでしょうか。個人的には、経営課題として優先順位が高く、HR変革を先導していくべき採用担当には、会社のエース級社員を配置した方がよいのではないかと感じています。

(聞き手:アクティベーションストラテジー㈱コンサルスタッフ 柴田)