社長交代のご挨拶に代えて~新旧社長対談

私が社長になったとき/危機時の経営

篠原:

小川さんが社長に就任されたときは、厳しい経営環境だったと聞いています。

小川:

私が社長になったのは東日本大震災直後でした。
東北を中心に日本中が甚大な被害を受け、企業も工場設備等の再建を最優先にせざるを得ない状況でした。
再建費用を捻出するために企業が最初にカットする予算は広告宣伝費やコンサルティング費用ですから、とにかく売上を作らなくてはいけない状況でした。
逆にやるべきことが明確だったので、それに向かってひたすら走ったという感じでした。

左:前代表取締役社長 小川克己   右:新代表取締役社長 永松正大

永松:

資金繰りも大変でしたよね。

小川:

そう。 本当に業績が悪くて、正直なところ、借入も間に合わず、運転資金が足りなくなり、先行き不透明な最悪の業績下で私費を投入したこともありました。
しばらくして何とか業績回復しましたが、まずは社員の給与確保が優先で、ディレクター以上は3分の1以下の報酬でしのいでいましたね(笑)

永松:

そうですね、2年間ぐらい厳しい状況でしたよね。小川さん、胆力あるな・・・と思っていました。

小川:

そうね。 そういう状況でも止めない、諦めない、逃げないという気持ちしかなかったです。

永松:

そういう社長の想いは、そばにいれば言葉は無くても皆に伝わっていましたね。

小川:

それは良かった(笑)私が社長に就任してからのこの12年間、3・11の時のような苦しい状況もありましたが、良いことも沢山ありました。
私は、社員のワークライフバランスは重要だと思いますが、経営者には必ずしも当てはまらないと感じています。
私自身、たとえ休暇中であっても頭の中では24時間365日、会社のこと、社員のこと、クライアントのことを考えて経営をしてきたつもりです。
だからこの会社がわが子のように大切で、大好きで、他の人に経営を任せることに対して不安が無いと言ったら嘘になるかもしれません(笑)
ただ、真剣に会社のことを考えると今このタイミングで社長交代をしないといけないという思いに至りました。

平時の経営スタンス/バトンを渡そうと思ったきっかけ

篠原:

小川さんが今回経営のバトンを渡そうと思ったかきっかけは何だったのでしょうか?日本の社長の平均年齢は62歳くらいですから、まだまだ時間的余裕はあるように思えるのですが。

小川:

コンサルティングは気力と体力が充実していないと務まらない職業です。
単純に年齢ということではないのですが、マネジメント層を除くと「戦略コンサルタント45歳定年説(笑)」がまことしやかに言われていて、それを過ぎると気力と体力の維持が現場仕事では難しくなってきます。
もちろん、経営となるともう少し年齢は上がりますが、私が60歳までのあと3年間、経営者を続けたら永松さんが社長になるのはいくつかな?

永松:

52歳ですね。

小川:

だから、社長交代のタイミングは今しかないと思いました。
ある程度の長期ビジョンを持って経営をすることが非常に重要だと経験上感じていたので、次の経営者となる永松さんにも多くの時間が必要だと考えたからです。
経営のバトンを渡す側は、私情に流されず(笑)、会社を最も良くするベストのタイミングで経営のバトンを渡すことが大切だと思っています。

永松:

私自身、コンサルティング現場での経験から、一定の変革を実現していくにはそれなりの時間を要すると理解しています。ビジョンの浸透から実際に結果を残していくところまで、慌てず、しかし、大胆に動いていきたいです。

篠原:

東日本大震災のような危機的な状況にあると社員も一致団結しやすいと思うのですが、会社をとりまく環境や経営が安定してくると経営スタンスも変わってくるのでしょうか?

永松:

マネジメントスタイルの話になると思います。
経営が比較的安定している場合、「俺について来い」というスタンスは重要な意思決定の局面では有効かもしれませんが、それ以外の状況においては対話を織り込んだ方が良いのではないかと思っています。

小川:

そうですね。 クルト・レヴィンのリーダーシップ論的な話になりますが、短期間に劇的な改善をしようと思ったら専制型リーダーシップを発揮すべきでしょう。一方、経営の安定期ではそのような経営者だと社員は共感しにくいので、民主型のマネジメントが適していると思います。

篠原:

新社長がどのようなマネジメントをするのか、私達社員はドキドキしています。

小川:

どうして?

篠原:

経営陣が変わるとき、組織作りや人材育成、会社の雰囲気や対外的なアピールにどのように取り組んで、どう変わっていくのかと社員は期待をするからです。それと同時に、私たち社員は会社にどう参画するのか、どうあるべきかを考えていく責任があるとも感じています。

小川:

なるほど。事業承継の社員からの見え方ですね。

永松:

確かにそうですね。

小川:

経営を受け継ぐ側としては、社員のそういう気持ちに対して向き合わないといけないですね。
永松さんはこのタイミングでバトンを受け継ぐ側の立場としてどんな心境ですか?

永松:

ある程度心の準備をしていたつもりでしたが、いきなり来たなと思いました(笑)。
その場では「わかりました」と即答しましたが、暫くして仰せつかった大役と今後想定される道のりを改めて認識して、少しクラクラしました(笑)。
自分に務まらないとは思わないものの、小川さんの真似は到底できないし、どうしたものかと。

小川:

なるほど!(笑)

永松:

ただ、いきなりな感じではありましたが、逆にこれぐらい強引にやらないと物事は進んでいかないのだなというのも学びました。
だから「どう思う?」「どうしたい?」と聞きながら民主型で進めていくことは当然大事ですが、決めなくてはいけないことは大胆に決める必要があり、これからの私のマネジメントの中でも重要なところだと感じています。

小川:

これからは私が会長となり、陰になり日向になりご支援させていただきますので、しばらくは引継ぎ期間だと考え、永松さん、しっかり受け継いでください。

経営のバトンを受け継ぐにあたり

小川:

最後に、アクティベーションストラテジーの社長を受け継ぐに際して決意表明を聞かせてください。

永松:

経営者でありかつコンサルタントであるという「二つの顔」をバランス良く両方大事にしていきたいです。
コンサルティングファームである以上、コンサルタントとしてもリードし続けないといけないという意識は強く、お客様やその現場で起こっていることには常にアンテナを張り続けるべきと考えています。
コンサルティングファームとして提供すべきバリューは、将来短期的には変化しないと予想されます。
今後も、様々な領域に強みを持つメンバーと共に、お客様への価値提供を続けてまいります。
一方で、お客様のニーズを汲み上げていく過程では、コンサルティングという枠に収まらないことも出てくると思います。
私たちコンサルタントは経営者の立場を理解・共感できるアドバンテージを持っていると思いますので、 これまでのコンサルティングと異なるサービスや新しいビジネスチャンスには敏感に反応し、それを自分たちでやりたいと手を挙げるメンバーなど、新しい芽を摘むようなことをせずに大事にしていきたいです。

(聞き手:アクティベーションストラテジー㈱ 篠原)