プロジェクトの始まり

X社は、加工食品を手がける大手企業で、主力事業のブランド認知は高く、製品名を挙げれば誰もが知るほどであった。
だが近年はその主力事業が業績の足を引っ張っており、会社全体ではなんとか黒字を維持していたものの、主力事業そのものは赤字となっていたのだ。
X社は、当時の社長が自ら大ナタを振るい、不採算工場を閉鎖するという外科的手術によって効率改善を試みた。
しかし、それなりに効果は出たものの、主力事業の赤字の解消にまでにはいたらなかった。
そうした中、アクティベーションストラテジーに全社経営改革の依頼が打診された。

表層的な事象に惑わされず真因を追求

プロジェクト開始時に、X社は最大の課題はシステムの不備により在庫の数量が正確に把握できないことだと認識していた。
確かに、過剰在庫や欠品が常態化し、過剰在庫になれば、その圧縮には商品を引き取ってもらうための値引きやリベートといった追加経費が発生し、欠品による機会損失回避のためには、緊急増産のための残業や臨時要員の確保、個配会社による臨時配送等でコストが増大していた。

しかし、アクティベーションストラテジーのチームがX社内でのヒアリングを重ね、業務プロセスの見直しを進めていくと、在庫が安定しないことの真の要因は、単に情報システムの問題だけではないことが見えてきた。

X社では、営業担当者が事前に顧客から発注見込みをヒアリングし、前月に販売計画を作ることになっていたのだが、そのあとに顧客の発注見込みが変わったとしても、その数字は修正されていなかった。

もちろん、営業担当者は客先に日参しており、発注見込みの変化は常に把握している。
だが、その新たな数字を販売計画に織り込むプロセスが存在しないことに加え、営業担当者が手間をかけてそれを行うインセンティブが無かったのだ。

一方、営業担当者が作成する販売計画の精度が低いことは、製造部門も認識していた。
製造部門は元々営業部門の販売計画を元に生産計画を立てるルールにはなっていたが、いつの頃からか、それをあてにせずに独自の生産計画を作成していた。
営業、製造のいずれの部門も会社に不利益を与えるつもりはまったくなかった。
だが、長らく機能別に分かれた縦割りの組織構造が続いたことで、部門間の対立意識が生まれ、それぞれの部門に関わることだけを実行し、他部門の事には口出ししないといった文化がいつしか定着していたのである。

オペレーション・IT(システム)と同時に組織・人事・企業風土を変革

長らく続いた縦割り組織によって生まれた「部門間の相克」を解消しなければ、仮に基幹システムを入れ替え、営業部門が最新の販売見込をリアルタイムでインプットしても、生産部門が独自の判断で生産計画を作成してしまう恐れが残る。

そこで、アクティベーションストラテジーのチームは新システムの導入によって在庫のリアルタイム管理を実現するのと同時に、全体的な業務プロセスの抜本的な見直しとそれに最適な組織体制を構築した。

その体制構築とは、対立していた販売、製造、物流部門からエース級のスタッフを選抜し、営業の需要予測をベースに生産計画及び物流計画を作成する専門部署の創設である。
新設された専門部署は、サプライチェーン全体の最適化をミッションとし、社内のさまざまな組織に横串を通す形で作られた。
また、そもそもの需要予測の精度向上のために、営業の販売計画と実績とのズレを営業拠点のKPI(key performance indicator)とし、拠点間でそのKPIを競わせると同時に、営業担当者の人事評価にも反映する仕組みも構築した。

こうしてアクティベーションストラテジーおよびX社のプロジェクトメンバーにより改革のプランは作り上げられた。
しかし、それが現場のスタッフに受け入れられなければ水泡に帰してしまう。
そうならないためには、それぞれの部門内のメンバーの意識改革が必要となる。アクティベーションストラテジーのチームは、このまま現状の赤字垂れ流しの非効率な業務を続けていくと会社がどうなってしまうのかを丁寧に伝えた。
また、新体制では需要予測の頻度を上げることで特定部門の負荷は高くなるものの、全社の視点で見ると後ろ工程での残業や臨時要員の作業工数が大幅に減り、その人員を負荷が上がる部門に再配置するなどのシミュレーション結果を数字で見せ、時には優しく、また時には厳しい言葉をもって、X社の社員に対して語りかけ現場の意識を変えていった。

経営改革で成果を出すために、企業そのものをACTIVATIONすること

現場での実現可能性の検証が済んだ改革プランは完成した。
しかし、それを実際にX社が実行出来なければ「絵に描いた餅」で終わる。プランの成否は、プロジェクトにあまり関与していなかった一部の役員の説得に掛かっていた。

アクティベーションストラテジーのチームは、1か月半に渡り毎週行われた臨時役員会において、プロジェクトの報告資料を懇切丁寧に説明した。
当初はなかなか理解が進まなかった役員達も、回を重ねるにつれて少しずつプロジェクトの真意を認識し始めた。
すると、ある時を境に、当該プロジェクトのキックオフミーティングでは最もネガティブな態度だった社内でも一目置かれている実力者の役員が、打って変わって今回のプロジェクトを絶賛し始めたのだ。

なかでも、営業起点でのサプライチェーンの最適化や部門間の対立意識を解消するための組織変更について、「これこそ自分がやりたかったこと」と全面的に賛同し、自らの担当地域に先行導入してパイロットケースとすることを申し出るほどだった。
モデル地域での成功体験は、他の地域での改革実践にも大きな自信となり、その後のプロジェクトの定着・実行フェーズはスムーズに進んだ。

このほかにも、製品開発プロセスの改革や顧客ランクに基づく営業政策の見直しなど、アクティベーションストラテジーが支援した全社経営改革は広範囲にわたった。
そして、プロジェクト開始から3年後には、営業利益率が2.5倍になったのを筆頭に、経営指標を大幅に改善することに成功した。

CASE 02

名門企業の全社構造改革プロジェクト

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CASE 03

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